受動態は能動態に戻そうぜ!文法力が身に付く対処法

英文法を勉強する中で、受動態という表現に戸惑う人も多いのではないだろうか。
わざわざ目的語が主語にされていて、直感的には文の意味を理解しにくいことも多い。
ここでは、受動態の文の基本を確認するとともに、受動態の文への対処法についてもお話ししていこう。
特に、「彼は財布を盗まれた」が "He was stolen his wallet." だと思っている人は必見だ。
CONTENTS
受動態にすることができる文型は?
受動態の文は、能動態の文の目的語Oを主語の位置に持ってきたものだ。
そこで、目的語Oを備えた第3文型・第4文型・第5文型だけが受動態で表現することのできる文だということを、まずは押さえておこう。
SV(第1文型)
SVC(第2文型)
⇒ 目的語Oがないので、そもそも受動態にはならない。
SVO(第3文型)
SVOO(第4文型)
SVOC(第5文型)
⇒ 目的語Oを主語の位置に置き、受動態をつくる。
能動態を受動態にする4つのステップ
基本的には、次の4つのステップを踏めば、受動態の文を完成させることができる。
1. 他動詞の目的語Oを、主語の位置に置く
2. 他動詞doを「be + done」という形にする
3. SVOの後ろに何かあるなら、それをそのまま下ろす
4. 能動態の文の主語Sを「by S」として添える
第3文型・第4文型・第5文型のそれぞれについて、この流れを簡単に確認しておこう。
■ 第3文型SVOを受動態にする場合
He wrote this article in 30 minutes.
↓ 受動態にすると……
This article was written in 30 minutes by him.
この記事は彼によって30分で書かれた。
■ 第4文型SVOOを受動態にする場合
Jeff bought her a dog.
↓ 受動態にすると……
She was bought a dog by Jeff.
彼女はジェフに犬を買ってもらった。
■ 第5文型SVOCを受動態にする場合
She kept him waiting for two hours.
↓ 受動態にすると……
He was kept waiting for two hours by her.
彼は彼女に2時間も待たされた。
この「受動態の文をつくる4つのステップ」は、英文法の中でもかなり基本的なところなので、しっかりと押さえておいてほしい。
「彼は財布を盗まれた」だと思う人へ
逆に、受動態は能動態に戻せ!
英文法が苦手な人の場合、受動態の文を受動態として扱ってしまっている傾向がある。
「はっ?受動態なんだから、受動態として扱うなんて当たり前じゃん!」
という声も聞こえてきそうだが、わざわざ扱いづらい受動態という形に挑む必要はない。
文法力、つまり、文構造を把握する力を身に付けたいのであれば、受動態の文を能動態の文に戻して考えるよう心がけよう。
手順としては、先ほどの「4つのステップ」の逆なので、以下の通りだ。
1.「by S」を、文頭の主語Sに戻す
2.「be + done」を、能動形の他動詞doに戻す
3. 受動態の文の主語を、他動詞doの目的語Oにする
4. 他に何か残っていれば、そのまま置いておく
これを参考にしながら、受動態の文をいくつか扱ってみよう。
なぜ “He was stolen his wallet.” は間違いなのか
「受動態を能動態に戻す」という作業をしっかりと行わないと、例えばこんな間違いを犯してしまいがちだ。
「彼は財布を盗まれた」
⇒ He was stolen his wallet.(×)
もちろん、"He was stolen his wallet." と表現したくなる気持ちは十分わかる。
「彼は ⇒ He」
「盗まれた ⇒ was stolen」
「財布を ⇒ his wallet」
のように、日本語のそれぞれの部分を英語で表せば "He was stolen his wallet." になるわけだから、一見、どこも間違っていないように思える。
でも、この文を能動態に戻すと、どうなるだろう?文末に「by someone」が省略されていると考えれば、次のようになるはずだ。
He was stolen his wallet (by someone).
↓ 能動態の文に戻すと…
Someone stole him his wallet.(×)
この "Someone stole him his wallet." という文だが、さすがにマズい。himとhis wallet、目的語が2つ並んだような形になっているが、steal(を盗む)は第4文型SVOOを導くような動詞ではない。
第4文型SVOOを導く動詞は「授与動詞」と呼ばれ、「人に何かを与える」という意味合いを含むもので、steal(を盗む)とは真逆のものだ。
※参考記事:今さら聞けない第4文型SVOO!英文法の基礎をもう一度
こうやって能動態の文に書き換えれば、元の受動態の文が間違いだということが相当ハッキリする。
ちなみに「彼は財布を盗まれた」は、正しくは次のように表現される。
He had (got) his wallet stolen.
彼は財布を盗まれた。
これは、過去分詞stolenを補語に従えた第5文型SVOCだ。詳しくは以下の記事で解説しているので、必要な方は参考にしてほしい。
※参考記事:みんな暗記に頼り過ぎ!have (get) + O + 過去分詞は第5文型
能動態に戻せば見えてくる、あの熟語
しっかりと定着させたいので、もう一つ練習しておこう。
He was informed of the fact by Olivia.
これを能動態の文に戻すと、どうなるだろう?
He was informed of the fact by Olivia.
↓ 能動態に戻すと…
Olivia informed him of the fact.
オリヴィアは彼にその事実を知らせた。
「inform A of B/AにBについて知らせる」は非常によく出てくる表現なのだが、受動態のままでは少々扱いづらいものだ。
今回のように能動態に戻すことで、熟語帳などに載っている見慣れた形となり、かなり対応しやすくなる。
まとめ
いかがだっただろう。学校の授業などでは、よく「能動態を受動態にしてみよう!」と言われたりするが、行うべきはむしろその逆だ。
慣れるまでは能動態に戻すのが大変かも知れないが、文の形としては「受動態」よりも「能動態」の方が格段にわかりやすい。
「受動態 ⇒ 能動態」の書き換えに限らず、英文をできるだけ見やすい形に変形することが、文法力を身に付ける近道だろう。
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