
原形不定詞とは、その名の通り、to が省略されて動詞の原形だけが残った不定詞のことだ。
基本的には、使役動詞(make, have, let)や知覚動詞(see や hear など)と一緒に使われるが、他にもいくつか、原形不定詞を使う表現がある。
ここでは、原形不定詞を使う表現の全体像を見ていこう。
この記事の目次
原形不定詞を必ず使う表現
使役動詞(make, have, let)と知覚動詞(see, hear など)は、不定詞を従える場合には、必ず原形不定詞(to がない不定詞)を使う表現だ。
1. 使役動詞(make, have, let)
使役動詞(「人に~させる」という意味の make, have, let)は、原形不定詞と一緒に使う表現の代表だ。
多くの「人に~させる」という他動詞(force, compel, oblige など)が「他動詞+人+ to do」という形を取るのに対して、使役動詞は「他動詞+人+ do」という形を取る。
彼女は彼に部屋を掃除させた。
明日彼に電話させます。
あなたのご都合を私にお知らせください。
重要なのは、使役動詞は第5文型(SVOC)を作っているという点だ。
どうしても、原形不定詞(to がない不定詞)という表面上の形に目を奪われがちだが、「人」と「原形不定詞」の間には「主語-述語の関係」が成り立っていて、これは第5文型(SVOC)の大きな特徴だ。
英語でもっとも重要な第5文型(SVOC)については、以下のページで詳しく説明しているので、不安があれば参考にしてほしい。
※ご参考:
第5文型(SVOC)のたった1つのポイント
例文も全パターンあり >>
2. 知覚動詞(see, hear など)
知覚動詞(see, hear など)も、不定詞を従える場合には、原形不定詞を使う表現だ。
帽子をかぶった男が走り去るのを見た。
彼がその歌を歌うのを聞いた。
先ほどの使役動詞と同様に、知覚動詞も第5文型(SVOC)を作っている。「人」と「原形不定詞」の間にある「主語-述語の関係」に注目しておこう。
※ご参考:
第5文型(SVOC)のたった1つのポイント
例文も全パターンあり >>
原形不定詞を使うこともある表現
また、次の3つの表現では、必ずというわけではないが、原形不定詞(to がない不定詞)を使うこともある。
1. help 人 (to) do
help(を助ける)は “help 人 to do” という形で使うことがあり、このときの不定詞(to do)が原形不定詞(do)になることがある。
隣に住んでいる人が部屋を掃除するのを手伝ってくれた。
普通の不定詞(to do)を使う場合と、原形不定詞(do)を使う場合との違いについては、以下のページで解説しているので、興味があれば参考にしてほしい。
※ご参考:help の用法
原形不定詞を使う理由とは? >>
2. All you have to do is (to) do
“All you have to do is (to) do” (~するだけでいい)という表現では、be動詞の補語Cになっている不定詞(to do)が原形不定詞(do)で表現されることもある。
あなたはここをクリックするだけでいい。
なお、この表現は、all と you の間に関係代名詞 that が省略されていて、名詞的用法の不定詞(to do)が補語Cになっている表現だ。
主語S:All (that) you have to do
動詞V:is
補語C:(to) click here
「あなたがすべきすべてのことは~することだ」という直訳を、自然な日本語として整えると「~するだけでいい」という言い回しになる。
3. but (to) do
一般の前置詞(of, in, into など)が動名詞(doing)を目的語Oに取るのに対して、前置詞の but(を除いて)は名詞的用法の不定詞を目的語Oに取る変わった前置詞だ。
私には一歩踏み出すことを除いた選択肢はない。
(=踏み出すしかない。)
この前置詞 but の前に do という動詞がある場合には、but の後ろの不定詞(to do)が原形不定詞(do)になることがある。
みんなの安全を祈ることを除いたどんなこともできない。
(=みんなの安全を祈ることしかできない。)
さいごに「原形不定詞を特別扱いしない」
確かに、「使役動詞や知覚動詞を使ったときには原形不定詞を使う」という知識は欠かせない。
ただ、言葉の表面や一部分にだけ目を奪われてしまうと、
・使役動詞や知覚動詞は第5文型(SVOC)を作っている
という本質が見えなくなってしまうので注意していこう。