関係代名詞whatへの対処法とwhatに関連する3つの構文
関係代名詞のwhatは、文法問題でも長文の中でも非常によく見かける最重要のものだ。
一般の関係代名詞who, which, thatとは異なる性質を持ち、その違いをしっかりと認識しておく必要がある。
今回は、関係代名詞whatの特徴と訳し方、さらにはそれを踏まえて、関係代名詞whatに関連する3つの構文についてお話ししていくので、しっかりとマスターしてほしい。
なお、今回の話の中で用いる「先行詞」「関係詞」「関係詞節」といった言葉が何を指し示すかについては、以下のページを参考にしてほしい。
※参考記事:初心者必見!関係代名詞の使い方|who, which, that の違いや省略について
※参考記事:関係代名詞・関係副詞の違いをマスターする3つのポイント
CONTENTS
1. 関係代名詞whatにどう対応するか?
関係代名詞whatを含む例文は、例えば次のようなものが挙げられる。
You cannot do necessarily what you think right.
自分が正しいと思うことを必ずしもできるわけではない。
こうやって訳してしまえばそれまでだが、英文と和訳のピストン運動だけでは、いつまで経っても文法力が身につかない。しっかりと仕組みを理解していこう。
よく言われることだが、関係代名詞whatは先行詞the thing(あるいは複数形のthe things)を含んだ関係代名詞だ。
関係代名詞whatが出てきたときには、必ず「what = the thing(s) which」と置き換えるところからスタートしてほしい。
余談だが、ちょっと考えてみれば、日本語でも同じようなことがあるんじゃないかな?
(a) 彼女が嫌いなようなことは、彼の話し方だ(△)
(b) 彼女が嫌いなのは、彼の話し方だ
(a)では「ような・こと」という異なる2語を用いて表現しているが、(b)では「の」というたった1語で「~するようなこと」という意味を表している。
関係代名詞whatは、この日本語で言うところの「の」みたいなものだろう。
外国人からすれば、他にも様々な用法のある「の」という言葉は少々理解しにくい。その場合、日本人にとっては多少不自然に聞こえる「ような・こと」という2語に分けて考えると、わかりやすいのだ。
関係代名詞whatをthe thing(s) whichに置き換えて考えるのは、これと同じようなことだ。
日本人からすると、他にも「疑問詞」としての用法がある「what」という言葉は、そのままでは理解しにくい。だから「the thing(s) which」という形に置き換えて考えようというのだ。(確かにこれは、英米人には少々奇妙に聞こえるかもしれないが。)
では改めて、先ほどの例文を見てみよう。
You cannot do necessarily what you think right.
↓
You cannot do necessarily the thing which you think right.
まずはこうやって、what = the thing whichに置き換える。
そして次の瞬間!
「2つのSV構造に分ける」ということを実践してもらいたい。
「関係代名詞・関係副詞の違いをマスターする3つのポイント」でも詳しくお話ししているが、関係詞が出てきたら必ず2つのSV構造に分けよう。
いろいろ学ぶべきことの多い関係詞という単元だが、結局のところ、この「2つのSV構造に分ける」という行為をどこまで実践できるかが勝負だ。
SV構造が2ヶ所にある文を扱うより、1ヶ所ずつに分解した方が当然わかりやすいですよね?だったら、やりましょう!
You cannot do necessarily the thing which you think right.
↓
1文目:関係詞節以外
You cannot do necessarily the thing.
2文目:関係詞節の中身
you think right.(△)
あとは仕上げに、必ず先行詞を繰り返す。ここも2つのSV構造に分けるときのポイントだった。
1文目:関係詞節以外
You cannot do necessarily the thing.
2文目:関係詞節の中身
you think it right.(○)
これでOK、カンペキだ。後はそれぞれの文を訳すだけでいい。
1文目「そのことを必ずしもできるわけではない。」
2文目「あなたはそれが正しいと考えている。」
1文目は部分否定になっているので注意しよう。necessarilyは「必ず」という意味の全体を表す副詞で、「否定語(not)+全体を表す言葉(necessarily)=部分否定」となる。
2文目は典型的な第5文型だ。O‐Cの部分をしっかりと主語‐述語っぽく訳そう。(参考:知らなきゃヤバい!?第5文型のたった1つのポイント)
what = the thing(s) whichに置き換える ⇒ 2つのSV構造に分ける
これが関係代名詞whatに対する、死角なしの対処の仕方だ。
2. 他の関係代名詞との違い
また、スムーズな英文読解を行うためには、関係代名詞whatと一般の関係代名詞(who, which, that)の違いを意識しておく必要がある。
一般の関係代名詞を用いた例文と、先ほどの例文を見比べてみよう。
This is the house which he lives in.
You cannot do necessarily what you think right.
何を比べるかというと、関係詞節そのものの品詞だ。
一般の関係詞節(which he lives in)は先行詞と呼ばれる名詞(house)を修飾しているわけだから、形容詞節(大きな形容詞のカタマリ)としてはたらいている。上の例だと、「彼が住んでいる ⇒ 家」という具合だ。
これに対して、関係代名詞whatが導いている節(what you think right)の品詞は何だろう?
これは名詞節だ。他動詞doの目的語Oになっているから名詞節だと考えてくれてもいいし、the thing which you think right(あなたが正しいと考えること)に置き換えられるから名詞だと考えてくれてもいい。
関係代名詞whatは、一般の関係代名詞と違い、名詞節を導くというのがポイントだ。
3. 関係代名詞whatの構文(1) what we call
では、関係代名詞whatへの対処の仕方が理解できたところで、whatを含む構文を3つご紹介しよう。まずはこちらの「what we call = what is called/いわゆる」という構文だ。
He is what we call a self-made man.
彼はいわゆるたたき上げの人だ。
a self-made manは「自分で自分のことを造り上げた人」つまり「たたき上げの人・生え抜きの人物」という意味だ。
さて、ここでの問題は、なぜ「what we call」や「what is called」が「いわゆる」という意味になるのかということ。何の理屈もなしに「what we callはいわゆるって意味!」だと覚えるのは気が進まない。
せっかくだからその仕組みから理解して、構文の知識と文法力(文構造を把握する力)の両方を手に入れよう。これこそ、レバレッジ思考だ。
基本的に「what = the thing(s) which」でOKなのだが、今回の構文ではそう書き換えてしまうと、彼=モノになってしまう。
He is what we call a self-made man.
= He is the thing which we call a self-made man.(×)
そこでここでは、関係代名詞whatに含まれる先行詞はthe thingではなくthe person(人)だと考えよう。
He is what we call a self-made man.
= He is the person whom we call a self-made man.(○)
what = the thing(s) whichに馴染んでいると、「え!?the person whom!?」と思うかも知れないが、ちょっと単語が変わっているだけで、関係代名詞whatが先行詞+関係代名詞という働きをしているという本質は変わらないですよね。
こうやって置き換えたら、あとはやることはいつも一緒!2つのSV構造に分けよう。
He is the person whom we call a self-made man.
↓
1文目:関係詞節以外
He is the person.
2文目:関係詞節の中身
We call a self-made man.(△)
そして仕上げに、先行詞を繰り返す!
1文目:関係詞節以外
He is the person.
2文目:関係詞節の中身
We call him a self-made man.(○)
2文目は第5文型SVOCになっている。him = a self-made manというわけだ。
(参考:知らなきゃヤバい!?第5文型のたった1つのポイント)
こうして、1文目と2文目をそれぞれ訳すと、
1文目「彼はそういう人だ」
2文目「(一般の)私たちはそのような人をたたき上げの人物と呼ぶ」
これを合体させると、
彼は(一般の)私たちがたたき上げの人物と呼ぶところの人だ
つまり
彼はいわゆるたたき上げの人物だ
という意味に辿り着く。
what is calledは2文目を受動態にすればよい!
では、同じ「いわゆる」という意味の「what is called」についても考えてみよう。先ほど2つのSV構造に分けたものを材料として使っていきたい。
1文目:関係詞節以外
He is the person.
2文目:関係詞節の中身
We call him (= the person) a self-made man.
この2文目を、受動態にするとどうなるだろう?能動態 ⇔ 受動態の書き換えについては、以下の記事がお役に立つだろう。
参考:”He was stolen his wallet.”が「彼が財布を盗まれた」だと思う人へ
2文目を受動態にすると、こうなる。
1文目
He is the person.
2文目
He is called a self-made man (by us).
そしてこの2つの文を、関係代名詞を使って1つの文にすると、
He is the person who is called a self-made man.
まで辿り着く。2文目の主語Heが、関係代名詞whoへと姿を変えたわけだ。あとはこの文のある部分を単語1語で表現することができるのだが……そう、the person whoをwhatに置き換えることができる!
He is the person who is called a self-made man.
= He is what is called a self-made man.
関係代名詞whatは先行詞the thing(たまにthe person)を含んだ関係代名詞だから、the person + whoを1語のwhatに戻したというわけだ。
こうして生まれたのが、受動態の形をした「what is called(いわゆる)」という構文だ。
4. 関係代名詞whatの構文(2) what S is
では、関係代名詞whatに関連する2つ目の代表的な構文をご紹介しよう。
what S is:現在のS(の状態)
what S was:過去のS(の状態)
what S used to be:過去のS(の状態)
一見すると「???」な表現だが、これらは英語の文章を読んでいてもよく見かけるものなので、ぜひともマスターしたい。次の文を例に展開しよう。
John is not what he was.
ジョンは昔の彼ではない。
先ほどのwhat we callと同様で、ここも先行詞としてthe thing(s)が含まれていると考えると、John = the thing(s)になってしまうので、第2の矢・the personが先行詞として含まれていると考えて書き換えよう。
John is not what he was.
= John is not the person which he was.
ここで奇妙なのは、先行詞がpersonなのに関係代名詞としてwhoではなくwhichが用いられていることだ。
「人が先行詞なら、関係代名詞はwhichじゃなくてwhoじゃないの?」
もちろんその通り。実は、ここでのpersonは「人」ではくて「人柄」という意味で用いられているのだ。「人柄」というのは「人」ではないですよね?だから、関係代名詞はwhichを用いているというわけ。
さて、2つのSV構造に分けよう。関係詞が出てきたら、2つのSV構造に分ける。だいぶん身についてきただろうか?
John is not what he was.
= John is not the person which he was.
↓
1文目:関係詞節以外
John is not the person.
2文目:関係詞節(先行詞を繰り返す)
He was it (= the person).
このようになるはずだ。
1文目「ジョンは(今現在)そのような人柄ではない。」
2文目「彼は(過去のあのとき)そのような人柄だった。」
これらを合わせると、
ジョンは(今は)昔の彼ではない
という意味にすぐに辿り着く。ね?これも丸暗記する必要のない構文でしょう?
5. 関係代名詞whatの構文(3) A is to B what C is to D
いよいよ3つ目の構文だ。
A is to B what C is to D
AのBに対する関係は、CのDに対する関係と同じだ
何とも構文らしいキレイな形をしているが、これも丸暗記してしまうのは勿体ない。よく噛んで飲み込み、しっかりと栄養分を吸収しよう。
Reading is to the mind what food is to the body.
読書と精神の関係は、食と肉体の関係と同じだ。
何を食べるのかによってどういう体が形作られるかが決まる。それと同じように、どのような本を読むのかによって自身の思考や内面が形成される、といったところだ。
さて、関係代名詞whatを「先行詞+関係詞」の形に書き換えよう。ここは基本通り、what = the thing whichでいい。
Reading is to the mind what food is to the body.
= Reading is to the mind the thing which food is to the body.
そしてこれを、2つのSV構造に分けるわけだが、その際に1つ目の文の語順を工夫してもらいたい。
確かに関係詞節以外が1文目なので、
Reading is to the mind the thing.(△)
となりそうだが、「to the mind the thing」の辺りがいささかしっくり来ない。そこで先行詞the thingをもっとわかりやすい場所に戻してやろう。
Reading is the thing to the mind.(○)
ここでのthe thingはbe動詞の補語Cというわけだ。では改めて、1文目と2文目がどうなるのかを見てみると……
1文目:関係詞節以外
Reading is the thing to the mind.
2文目:関係詞節(先行詞を繰り返す)
Food is it to the body.
このように分けられるのがおわかりだろうか。それぞれの意味を考えてみると、
1文目「読書は精神に対してそういうもの(the thing)だ。」
2文目「食は肉体に対して(同じく)そういうもの(it)だ。」
となるが、2文目のitがすなわち1文目のthingであることから、読書と精神の関係が、食と肉体の関係と同じだということがわかる。
最後に、元に戻してみよう
A is to B what C is to Dが「AのBに対する関係はCのDに対する関係と同じだ」という意味になる理由はご理解いただけただろうか?
それでは最後に、2つに分けたSV構造を元に戻してみよう。
「Food is it to the body.」という2文目のitが、関係代名詞whichに姿を変えて「which food is to the body」という関係詞節を導く。関係詞節は先行詞の直後に置くのがもっともわかりやすいので、1文目の先行詞the thingの後ろにこの関係詞節を置くと、
Reading is the thing which food is to the body to the mind.(△)
という文が出来上がる。
このような語順が完全な間違いというわけではないが、そもそもこの手の表現は、「読書と精神の関係が伝わりにくいだろうから、食と肉体の関係を例として挙げよう!」というときに用いるものだ。
何が問題かと言うと、関係詞節「which food is to the body」が先行詞thingの直後に置かれたことによって、to the mindという前置詞句が文末に追いやられてしまっているのだ。
これではReadingとto the mindが離れすぎてしまい、もっとも伝えたかった「読書と精神の関係性」自体が希薄化してしまう。
そこで、前置詞句(副詞句)to the mindをReadingの近くに持ってきたのが、次のこの形。
Reading is <to the mind> the thing which food is to the body.
副詞というのは置かれる場所が自由なものなので、こうやって前に回したというわけだ。あとは、the thing which = whatにまとめてやると、
Reading is to the mind the thing which food is to the body.
= Reading is to the mind what food is to the body.
という、キレイな形に戻るというわけだ。ちなみに、Reading is ……の補語Cは、関係代名詞whatが導いている名詞節「what food is to the body(食が肉体に対してそうであるもの)」ですね。
6. まとめ~今日得られた文法力~
いかがだっただろう?と言うか、おつかれ様でした!
今回は関係代名詞whatの基本的なところから、関係代名詞whatに関連する3つの構文までを勉強した。
特に構文の意味は覚えてしまえば話が早いように思えるかも知れないが、3つの構文の意味をまとめるだけでは、そもそも情報価値がないし、キミの文法力も脆弱なままだろう。
英語を論理的に考える習慣のない人にとっては、今日の話は難しく感じたかも知れないが、実はロジックそのものはいたってシンプルなものだ。
今日の内容は、腑に落ちるまで何度も何度も復習してほしい。
関係代名詞whatへの対処の仕方と、2つのSV構造に分けるという習慣が身に付くはずだ。
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