"He was stolen his wallet."が「彼は財布を盗まれた」だと思う人へ

「受動態」「能動態」の「態」という言葉は、厳密には「述語動詞の形」を意味するようだが、あまり気にする必要はない。
無用な、つまり実用的ではない文法用語を定義どおりに正しく覚えていくことは、このサイトの目的ではないからだ。
今日は「受動態を能動態に書き換える(戻す)」という、英語の文法力を鍛えるのにとても有効な作業を行っていこう。
なお、本日の内容に関してはこちらの動画の中でも詳しく解説しているので、参考にしていただきたい。
能動態を受動態にする4つのステップ
まず初めに、基本的なことを確認しよう。
「能動態の文⇒受動態の文」の書き換えは、一般的に次の4つのステップを踏まえる。
■1. 能動態の文の目的語Oを、受動態の文の主語Sとする
■2. 能動形の他動詞を、「be + done」の形にする。
(ここでのdoneはdo – did – doneのdoneで、一般の過去分詞を表す。)
■3. SVOの後ろに何かあるなら、そのまま下ろす。
■4. 最後に、能動態の文の主語Sを、「by + S」として置く。
(by + SのSは、もちろん目的格にする。)
ただ、私たちにとって、受動態の文は分かりにくいものだ。能動態の文の方が、はるかにありがたい。そこで、基礎の確認として「能動態⇒受動態」の確認をしたが、実際にはこの逆の流れに乗ることが重要である。
逆に、必ず能動態に戻そう
今日はあまり頭がさえないので、君に例文を作ってほしい。あまりネガティブな話は好みじゃないが、「彼は財布を盗まれた」あたりでどうだろう。「財布」は「wallet」としよう。
「彼は財布を盗まれた」
どうだろう?英語で表現すると…
「He was stolen his wallet.」
もし君がこう答えてくれたとすれば、少し修正が必要なようだ。何度も言うが、今日は頭がさえない。この英文のどこがまずいのか、君自身で考えてみてほしい。
何も特殊な考え方が必要というわけじゃない。君が表現したこの文は「受動態の文」なのだから、「能動態の文」に戻すだけでいいんだ。
最初に確認した4つのステップの4つ目を思い出してほしい。受動態の文の最後には、「by + S」という、意味上の主語が添えられていたはずだ。
「He was stolen his wallet.」にはそれが置かれていないが、その点が間違いというわけではない。今回は、「誰に盗まれたのかがわからない」から、書きようがなかったのだろう。「by someone」あたりを補って考えるとよい。
He was stolen his wallet (by someone).
彼は財布を盗まれた(?)
それでは、先ほどの4つのステップを「逆」から見てみてほしい。
……。まあ、そう怒らないでほしい。冗談だ。
さえない自分の頭を起こそうと必死なんだ。
ゴホン!改めて、能動態を受動態にする4つのステップの「逆の手順」を見てみると…
というわけだ。この手順に従って、先ほどの受動態の文を能動態の文に戻すと、どうなるだろう?
【受動態】
He was stolen his wallet (by someone).
↓
【能動態】
Someone stole him his wallet.(×)
そうそう、そうなる。受動態の文は何となく正しく感じたかもしれないが、こうやって能動態の文に戻すと、デタラメさが浮き彫りになる。
「him his wallet」というように「人+物」という形で名詞が2つ並んでいて第4文型SVOOのように見えるかも知れないが、第4文型SVOOを導く動詞は、give, buy, tellなどの人にメリットを与えるような動詞(授与動詞)だ。steal(を盗む)はどう考えても第4文型SVOOを導きそうにない。「Someone stole him his wallet.(×)」は、誤った英文なのだ。
さあ、面倒に思うかもしれないが、受動態を能動態に戻すメリットは感じてもらえただろうか?受動態の文よりも能動態の文の方が、はるかに分かりやすい。だったら、能動態に変形しない手はないでしょう?
では「彼は財布を盗まれた」をどう表現するのか?
最後に、「彼は財布を盗まれた」という文を、どう英語で表すのかを確認して、今日の勉強を終えることにしよう。
いくつか解決策があるが、第5文型SVOCを利用するという手段が1つ挙げられる。
He had his wallet stolen.
彼は財布を盗まれた。
第5文型SVOCの本質については、以下の記事を参考にしてほしい。英語でもっとも重要な文型だ。
参考:知らなきゃヤバい!?第5文型のたった1つのポイント
参考:英語が苦手な人へ!第5文型を100%理解できるようになる話
また、動詞のhadをどのように訳すのかにあまりこだわらない方がいい。上の参考記事でも詳しくお話ししているが、第5文型では、まずはOとCの部分の主語-述語の関係だけを抜き出そう。
そして、この「His wallet was stolen (by him).」は、受動態の文だ。ここもしっかりと能動態の文に戻すと、
【受動態の文】
His wallet was stolen (by someone).
↓
【能動態の文】
Someone stole his wallet.(○)
となり、正しい能動態の文が導かれる。能動態の文が正しいということは、その元になっている受動態の文も正しいということだ。
そして、この「彼の財布が(誰かに)盗まれた」という主語-述語の関係が、元の第5文型SVOCに含まれるわけだから、文全体としては「彼は(誰かに)財布を盗まれた」という意味になる。
まとめ
受動態の文というものは、我々日本人にはどうも馴染みにくい形をしている。もちろん感覚レベルで理解できるレベルにまで到達したいが、そのためには「能動態に書き換える」という道を何度も何度も通る必要があるだろう。
それでは、今日はここまで!
文法的な思考、つまり、論理的な思考を身に付けるために、「能動態の文への書き換え」をしっかりと実践してほしい。
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