動名詞と不定詞の使い分け|ing と to のイメージの違いとは?
動名詞( doing )と名詞的用法の不定詞( to do )は、どちらも「〜すること」という意味の表現だ。
使い分けるときには、
動名詞:過去のこと、現在のこと
名詞的用法の不定詞:未来のこと
という違いを目安にしよう。
動名詞と不定詞の違い
同じ「〜すること」という意味の表現でも、動名詞( doing )と不定詞( to do )には次のような違いがある。
動名詞:過去のこと、現在のこと
名詞的用法の不定詞:未来のこと
これはそれぞれ、ing や to という言葉の持つイメージに関連している。
ing のイメージは「目の前のこと」
動名詞( doing )に限らず、ing には「目の前のこと」というニュアンスがある。
I can't easily stop watching YouTube.
( YouTube を観るのをなかなかやめられない。)
※ watching は「目の前のこと」や「今までやってきたこと」を表している
The cat sleeping on the sofa is not mine.
(ソファーで寝ている猫は私のじゃないよ。)
※ sleeping は「目の前のこと」や「今までやってきたこと」を表している
確かに、動名詞(〜すること)は「名詞」の一種だし、現在分詞(〜している)は「形容詞」の一種なので、両者は意味も文法も異なる表現だ。
ただ、どちらも同じ「 ing という綴りと音」を持っているので、ニュアンスとしては重なるところがあっても不思議ではない。
動名詞(〜すること)が持つ「目の前のこと」「今までやってきたこと」というニュアンスは、現在分詞(〜している)からの移り香だと押さえておこう。
to のイメージは「未来に向かって」
一方で、不定詞( to do )には「未来に向かって」というニュアンスがあるが、これは前置詞の to(〜に向かって)にも重なるものだ。
I plan to have a BBQ next holiday.
(次の休日にバーベキューをする予定なんだ。)
※ to have a BBQ は「未来のこと」を表している
She gave flowers to me.
(彼女は私に花をくれた。)
※ to は「動作が向かう方向」を表している
もちろん、不定詞の to と前置詞の to は文法的には異なるものだが、やはり、同じ「 to という綴りと音」なので、前置詞 to のニュアンスが不定詞( to do )に移っていても不思議ではない。
名詞的用法の不定詞(〜すること)が持つ「未来に向かって」というニュアンスは、前置詞 to(〜に向かって)の影響だと押さえておこう。
動名詞と不定詞の使い分け
動名詞( doing )を使うのか、名詞的用法の不定詞( to do )を使うのかに迷ったら、
動名詞:過去のこと、現在のこと
名詞的用法の不定詞:未来のこと
という違いを目安にしよう。万能ではないものの、判断基準としては有効だ。
(1) 動名詞だけを使う他動詞
次の他動詞は「動名詞だけを目的語Oにとる他動詞」の代表だ。
一概には当てはまらないものの、過去のこと(これまでやってきたこと)や現在のこと(目の前のこと)を表す文脈が多い。
いくつか例文を挙げておくので、文脈や音声と併せて、動名詞( doing )を続けるイメージを固めよう。
(コーヒーを飲むのをやめてみたら?)
※ stop to do(〜するために立ち止まる)は不定詞を目的語Oに取っているのではなく、自動詞 stop(立ち止まる)に副詞的用法の不定詞 to do(〜するために)が添えられた形。「をやめる」という意味の stop は動名詞だけを目的語Oに取る。
(日本での滞在、楽しんでください。)
(彼は絶対に間違いを認めないと思うよ。)
(この件についてのDMを送ってもらえませんか?)
(髪を切るのを一年以上も先延ばしにしています。)
(長野へ旅行に行こうと思ってるんだ。)
※似たような意味の plan が不定詞を目的語Oに取るのに対して、conside は動名詞を目的語Oに取る。進行形の be considering で使うのが通例。
that 節も目的語Oになるもの
ちなみに、ここで挙げた他動詞は、「動名詞か? 不定詞か?」で考えるなら「動名詞だけ」を目的語Oに取るが、中には that 節を目的語Oに取れるものもある。
※赤字の他動詞は that 節も目的語Oになる
余力があれば、併せて押さえておこう。
(2) 不定詞だけを使う他動詞
次の他動詞は「不定詞だけを目的語Oにとる他動詞」の代表だ。
ここも一概に当てはまるかどうかはともかく、未来のこと(未確定のこと)を表す文脈が多い。
いくつか例文を挙げておくので、文脈や音声と併せて、不定詞( to do )を続けるイメージを固めよう。
(あなたとディナーに行きたいです。)
(どうしてこういった根本的な改善を行おうと決めたのですか?)
(最初の会議は2月に行う予定です。)
(秘密にしておくって約束してくれる?)
(自分が望む生き方に反するように行動したくはありません。)
(その試合のチケットを取り損ねた。)
that 節も目的語Oになるもの
ちなみに、ここで挙げた他動詞は、「動名詞か? 不定詞か?」で考えるなら「不定詞だけ」を目的語Oに取るが、中には that 節を目的語Oに取れるものもある。
※赤字の他動詞は that 節も目的語Oになる
余力があれば、併せて押さえておこう。
(3) 動名詞と不定詞で意味が変わる他動詞
次の他動詞は「動名詞が目的語Oのとき」と「不定詞が目的語Oのとき」とで意味が変わる代表的なものだ。
ここも、動名詞が目的語Oのときは「過去のこと」、不定詞が目的語Oのときは「未来のこと」という基準が参考になる。
1. remember doing / remember to do
remember doing(〜したことを覚えている)が「過去のこと」をイメージした表現なのに対して、remember to do(〜するのを覚えておく)は「未来のこと」をイメージした表現だ。
詳しい使い方については、以下のページで確認しておこう。
2. forget doing / forget to do
forget doing(〜したことを忘れる)が「過去のこと」をイメージした表現なのに対して、forget to do(〜するのを忘れる、〜し忘れる)は「未来のこと」をイメージした表現だ。
また、語法的なことだが、forget doing は否定文や疑問文で使うのが一般的で、肯定文で「〜したことを忘れる」と表す場合には forget (that) SV を使うので気を付けよう。
3. try doing / try to do
try doing(試しに〜する)が「過去のこと」をイメージした表現なのに対して、try to do(〜しようとする)は「未来のこと」をイメージした表現だ。
和訳だけだと違いがわかりにくいかもしれないので、ここも必要に応じて、以下のページで学んでおこう。
4. regret doing / regret to do
regret doing(〜したことを後悔する)が「過去のこと」をイメージした表現なのに対して、regret to do(残念ながら〜する)は「未来のこと」をイメージした表現だ。
特に、ビジネスシーンなどでは、regret to do は「申し訳ありませんが〜です」というニュアンスでもよく使われるものだ。
(4) 動名詞でも不定詞でもあまり変わらない他動詞
最後に、動名詞と不定詞のどちらを目的語Oに取っても、あまり意味が変わらない他動詞に触れておこう。
It suddenly began to rain.
(突然雨が降り始めた。)
Honestly, I prefer being alone.
(正直に言うと、一人でいるのが好きなの。)
They ceased cooperating.
(彼らは協力するのをやめた。)
※同じ意味の stop や give up が動名詞だけを目的語Oに取るのに対して、cease は不定詞も目的語Oに取れる。やや文語的な表現。
さいごに|全体像を押さえてから細部に入ろう
ここでは動名詞( doing )と名詞的用法の不定詞( to do )の使い分けについて学んだ。すべてを丸暗記していくこともできるかもしれないが、
動名詞:過去のこと、現在のこと
名詞的用法の不定詞:未来のこと
という全体像を押さえた上で細部に入ると、知識を整理しやすいと思う。