仮定法過去完了の本当の使い方|仮定法過去との決定的な違い
仮定法過去完了とは、過去の事実に反することを表す動詞Vのことで、主節では “would have 過去分詞” や “could have 過去分詞” 、if 節の中では “had 過去分詞” という形で表すのが一般的だ。
ここでは、仮定法過去完了の特徴と使い方について、実用的な例文を交えて学んでいこう。
この記事を読んで得られること
- 仮定法過去完了の使い方がわかる
- なぜ、if の後ろで「過去完了形」を使うのかがわかる
- 仮定法過去との違いがわかる
CONTENTS
基本の確認|仮定法とは?
仮定法過去完了をマスターするために、まずは「仮定法」という言葉の定義をしっかり押さえておこう。
※「仮定法と if は違う」ということがわかっていれば、次の「仮定法過去完了の形」に進んでも大丈夫だ。
仮定法(仮定法過去と仮定法過去完了)はその字面から、「仮定を表す表現方法( if を使った文)」のことだと思われがちだが、文法的には「事実に反することを表す動詞V」のことだ。
(渋滞のことを知っていたら、もっと早く出発したのに。)
仮定法:had known と would have left
(お腹が空いているなら、サンドウィッチを作るよ。)
※この英文に仮定法はない。
仮定法過去完了を正しく理解するためにも、「仮定法と if は違う」というところをしっかり押さえておこう。
仮定法過去と仮定法過去完了の違い
なお、仮定法には(主に)仮定法過去と仮定法過去完了があるが、違いは「いつのことを表しているか」だ。
If you were free today, I would ask you to go to dinner.
(もし今日あなたが暇なら、夕食に誘うのに。)
※ if 節の中の動詞の形( were )から「仮定法過去」と名付けられてはいるが、would ask も仮定法過去だ。
If you had been free yesterday, I would have asked you to go to dinner.
(もし昨日あなたが暇だったなら、夕食に誘ったのに。)
※ if 節の中の動詞の形( had been )から「仮定法過去完了」と名付けられてはいるが、would have asked も仮定法過去完了だ。
仮定法過去について、詳しくは以下のページで学んでおこう。
仮定法過去完了の形
仮定法過去完了は「助動詞 + have 過去分詞」という形が骨組みの表現で、if 節の中では would は省略される(その場合は “had 過去分詞” を使う)という特徴がある。
厳密には、if 節で省略されるのは would だけなので、if 節で “could have 過去分詞” という形を使うこともあるが、基礎固めの段階であれば、上の表の形を押さえておけば大丈夫だ。
なお、would が省略される理由については、後半の「補足|なぜ if 節では “had 過去分詞” なのか?」で詳しく解説するので、興味があればそちらを参考にしよう。
助動詞を過去形にする理由
仮定法過去完了で助動詞の過去形( would, could, might )やそれに相当する had を使うのは、現実との距離感を表すため(事実に反するということを表すため)だ。
私たちは、能力を表す can(〜できる)の影響で、助動詞の過去形は「過去のこと」を表すと思ってしまいがちだ。
確かに「過去のこと」を表している
He could swim fast when young.
(彼は若いとき、速く泳げた。)
ただ、これはむしろ一種の例外で、多くの助動詞(推量の意味を持つ助動詞)の場合、その過去形は「現実との距離感」を表すことになる。
「現実との距離感」を表す
例:shall の過去形 should
You should take care of your health.
健康に気を付けた方がいいよ。(健康に気を付けるべきだ。)
※過去形の should は「過去のこと」を表しているのではなく、現実(健康に気を付けていない状態)と想像(健康に気を付けている状態)に大きな距離があることを表している。
こうした should と同じように、仮定法過去完了では「現実と距離がある(事実に反する)」ということを表すために、助動詞の過去形が使われる。
仮定法過去完了が「過去のこと」を表す理由
仮定法過去完了が「過去のこと」を表すのは、「助動詞 + have 過去分詞」という形が骨組みになっているからだ。
仮定法に限らず、一般的な助動詞(推量の意味を持つ助動詞)を使って「過去のこと」を表す場合には、助動詞そのものを過去形にするのではなく、「助動詞 + have 過去分詞」という形を使う。
助動詞 + have 過去分詞
例:職場に鍵を忘れたかもしれない。
○ I may have left my keys at the office.
× I might leave my keys at the office.
これを踏まえると、仮定法過去完了とは、「助動詞 + have 過去分詞」の助動詞を過去形にして現実味をなくした表現だと理解することもできる。
would, could, might の違い
なお、主節の仮定法過去完了で would, could, might のどれを使うのかは、可能(〜できる)や見込み(〜かもしれない)のニュアンスを持たせたいかどうかで判断しよう。
could have 過去分詞:〜できただろう
might have 過去分詞:〜したかもしれない
具体的には、この後の例文で確認するのが良さそうだ。
仮定法過去完了を使った例文
文脈的には、仮定法過去完了は、願望や後悔、提案や批判などの気持ちを表す表現だ。
これまでに学んだ、
・助動詞の過去形は「事実に反する」ということを表す
・「助動詞 + have 過去分詞」は「過去のこと」を表す
というポイントを押さえながら、仮定法過去完了を使った例文に触れていこう。
“would have 過去分詞” の例文
(もっと頑張って勉強していれば、試験に通ったかもしれない。)
(渋滞のことを知っていたら、もっと早く出発したのに。)
(私があなただったとしても、同じ決断をしたと思うよ。)
※ここでの if は even if(たとえ〜だとしても)の省略形だとも考えられる。
“could have 過去分詞” の例文
(もう少し早く招待状をもらっていたら、パーティに参加できたのに。)
(もう少し早く旅行を予約していたら、あなたは割引を受けられたのにね。)
(もし私がミーティングに参加していれば、あなたの提案を後押しできたのになあ。)
“might have 過去分詞” の例文
would(〜だろう)の代わりに might(〜かもしれない)を使うと、やや確信度が下がる印象になる。
(もし私があなたの立場なら、違った風に反応したかもしれない。)
(もし道が閉鎖されていると知っていたら、彼らはそのルートを避けたかもしれない。)
(もし彼女がもっと勉強していたら、試験に通ったかもしれない。)
I wish ... の例文
I wish(〜だったらなあ)は仮定法と一緒に使う表現で、文法的には、他動詞 wish(を願う)が that 節を目的語Oに取った形だ。
仮定法で would が省略されるのは、基本的には if 節の中だけだが、I wish(〜だったらなあ)はニュアンスとしては条件だけを述べたようなものなので、if 節のときと同様に would は省略される。( could は省略されずに残る。)
渋滞を避けるために別の道を選んでいたらなあ。
(そうしたら、例えば、もっと時間を節約できたのに。)
あなたが旅行に参加できていたらなあ。
(そうしたら、例えば、もっと楽しかったのに。)
as if の例文
as if(まるで〜するかのように)は接続詞の as と if が連続した表現だが、便宜上、大きな接続詞だと見なせるものだ。仮定法過去完了と一緒に使うことも多いので、確認しておこう。
(彼女はまるで彼のボーイフレンドだったかのように話をする。)
(彼はまるでお化けを見たかのようだった。)
仮定法過去完了の否定文の例文
仮定法過去完了を否定文で使うときには、“had not 過去分詞” や “would not have 過去分詞” というような語順にしよう。
(電車に乗り遅れていなければ、間に合ったのに。)
(あなたが私を助けてくれていなければ、私はそのプロジェクトを完了することができなかった。)
(彼にそんなことを言わなければよかったなあ。)
if の省略について
なお、仮定法を使っている場合、書き言葉では if が省略されることもあるが、その際には倒置が起こる(疑問文の語順になる)。
↓ if が省略されると……
Had I studied harder, I would have passed the exam.
疑問文でもないのに倒置が起こっている場合には「 if の省略」の可能性があるので、知っておこう。
補足|なぜ if 節では “had 過去分詞” なのか?
これまでにも学んだように、if 節の仮定法では would(〜だろう)が省略される。これは、if の後ろが推量(話し手が思っていること)を表すのは当たり前で、わざわざ推量を表す would を使う必要がないからだ。
ただ、would を省略するだけだと、仮定法の本質である「事実に反する」というニュアンスを表せなくなってしまう。(助動詞の過去形には「現実との距離感」を表す役割がある。)
そこで、if 節では “would have 過去分詞” の have が代わりに過去形( had )に変化して、現実と距離がある(事実に反する)ということを表してくれているわけだ。
↓ would が省略されて……
If we have known about the traffic, we would have left earlier.
↓「現実との距離感」を表すために have が過去形になって……
If we had known about the traffic, we would have left earlier.
こうした流れを見ると、if 節の中で使われる “had 過去分詞” は、見た目こそ「過去完了形」だが、その正体は “would have 過去分詞” だということがわかる。
さいごに|仮定法過去完了のベースは「助動詞 + have 過去分詞」
ここで学んだように、仮定法過去完了は「過去の事実に反すること」を表す動詞Vで、その骨組みは「助動詞 + have 過去分詞」という形になっている。
助動詞を過去形にすると「現実との距離」が生まれるというポイントと併せて押さえておこう。
また、当サイトの無料授業「暗記のいらない英文法(全31回)」の中でも、仮定法について論理的・本質的に学ぶことができるので、あなたの副教材として活用してもらえると幸いだ。
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