この14分を見逃すな!主格の関係代名詞だって省略されるんだぜ

先日、English Grammar Academy の講義を受けてくださっている方から、ある素晴らしいご質問をいただいた。
カナダの新首相にトルドー氏が選出された際の演説の中の、
Tonight Canada is becoming the country it was before.
という一節についてのご質問だ。
ここではいただいたご質問を元に、関係代名詞の省略に関する、ある刺激的な話をしていこう。
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この14分を見逃すな!有料級動画講義でも解説中
今回の内容については、以下の動画の中でも詳しく解説している。
ほんの14分の講義なのだが、そこには英文法の大切な考え方がギッシリと詰まっている。
この動画を見るだけでも、きっと英文法とこれまで以上に仲良くなってもらえるだろう。
「countryとitの間には、何が省略されてるの?」
それでは改めて、いただいたご質問の内容を確認してみよう。こちらがそれだ。
(ここから)
カナダの新首相にトルドー氏が選出された際の演説の中に
“Tonight Canada is becoming the country it was before.”
という一節がありました。countryとitの間に二つの文を繋ぐ語が省略されているはずなのに分かりませんでした。
比較のas?とも考えたのですが、ネイティブの方に聞いても答えて頂けませんでしたので解説をお願いします。
(ここまで)
質問者さまのように、「SVとSVの間には、接続詞が必要!」という考え方はとても重要だ。
結論を言うと、ここでは主格の関係代名詞whichが省略されている。
Tonight Canada is becoming the country (which) it was before.
ただ、いきなり「主格の関係代名詞が省略されている」と言われても戸惑う人もいるだろうから、続いては関係代名詞の省略についてもっとも基本的なことを説明しよう。
英語の文法を勉強中なら、さすがに次の内容を知らないのはヤバい。しっかりと確認しておくように。
目的格の関係代名詞は、よく省略される
関係代名詞で省略されるのは、通常、目的格の関係代名詞だ。主格の関係代名詞は、原則、省略されない。
I have a friend (whom) I respect.(省略可)
私には尊敬する友だちがいる。
That is the house (which) he lives in.(省略可)
あれは彼が住んでいる家だ。
I have a friend who lives in Tokyo.(省略不可)
私には東京に住んでいる友だちがいる。
なお、「主格」「目的格」というのは、簡単に言うと「代名詞の形(見た目)」のことだ。主格は主語Sとして用いるときの形、目的格は目的語Oとして用いるときの形。
上の例文では、それぞれの関係代名詞が、他動詞respectや前置詞inの目的語、livesの主語になっている。
主語は主格、目的語は目的格。では、補語は?
さて、ここである疑問が浮かぶ。
先ほど説明したように、主語Sの代名詞が「主格」、目的語Oの代名詞が「目的格」だとすると、補語Cの場所に代名詞を置く場合には「何格」を用いるのか?
He is a web designer.
I like him so much.
It is ○○.(それは「彼」だ。)
ここで「補格」というものがあれば話は単純なのだが……キミも「補格」なんていう言葉は聞いたことがないだろう。
ここ、集中してほしい。よく理解して覚えておこう。補語Cの位置に代名詞を置く場合には、英語では「主格」を使う。
例えば次のような場合。
このとき、犯人を指さして言うセリフはこうだ。
ここで、
は正しくない。be動詞の後ろ、補語Cの位置に置かれる代名詞が「主格」だというのは、こういうことだ。
例外!「補語Cになっている主格の関係代名詞」
目的格の関係代名詞は省略可能で、主格の関係代名詞は原則省略されない。
あぁ……この「原則」という言葉が、どれほど学習者の気持ちをへし折ってきたことか。原則があれば例外もあるわけで。
確かに、英文法には「重要でない例外」も多いが、今お話ししているのは、それとは対極にある例外だ。この知識がなければ、最初の
Tonight Canada is becoming the country it was before.
という、普通のニュースにすら出てきそうな文を理解できないのだから。
しっかりと押さえておきたい例外とは、補語Cになっている主格の関係代名詞は省略されうるということだ。
He is not the man (who) he was.
彼は昔のような人(昔そうであったような人)ではない。
※wasの補語Cになっている関係代名詞whoは、主格。
※便宜上whoとしたが、この場合はthatが用いられることが多い。
目的格の関係代名詞を補うことには慣れているかも知れないが、こういった「補語Cになっている主格の関係代名詞」も補えるようにしていこう。
そうでないと、関係詞節の存在に気付けない。関係詞節の存在に気付けないということは、「関係詞節を訳してから先行詞にかける」という流れも見えない。正しい手順で訳せない、解釈できないということになってしまう。
ということで。問題の英文はこういうことになる。
Tonight Canada is becoming the country (which) it was before.
今夜、カナダは以前のような(以前そうであったそうな)国に生まれ変わろうとしている。
関係詞節「which it was before」だけに注目した場合、関係代名詞whichがwasの補語Cということだ。
回答に対していただいた感想
質問者さまへは、こういった内容を動画で回答させていただいた。
ありがたいことに、回答に対してお返事までいただけた。
(ここから)
丁寧な解説を有難うございました。
知りたかったことは、関係代名詞節の文を書き換えた時に、先行詞を補語の位置で繰り返せるのかということでした。私はできないと思っていましたので、だったらどこなんだろう混乱してしまい、質問させて頂だきました。
「以前にも説明していますが…」にぴんとこない今のレベルが非常に残念なのでが、疑問が解けてすっきりしました。その上補語出身の関係代名詞は省略されることがあるという新知識まで得ることができました。
英文法に於ける自分のたち位置がよく分かりました。まだまだ玄関先に立って中を伺っている段階なんですね。いつか奥座敷まで上がり、先生の内容豊富で流暢な講義を即座に理解できるようになりたいと思っています。
(ここまで)
こちらこそ、ありがとうございました。焦ったり自信を無くしたりする必要はないので、一つずつ身に付けていきましょう!
さいごに
いかがだっただろう。
今回押さえておくべきは、何と言っても
・補語Cの格は「主格」
・補語Cになっている主格の関係代名詞は省略されうる
この2点だ。動画講義も、よくよく復習に活用してもらいたい。
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