【質問回答】「副詞の最上級には the は必要なの?」
先日、English Grammar Academy の生徒さんから、副詞の最上級についてのご質問をいただいた。
ここでは、そのご質問と回答を掲載しておこう。
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質問「副詞の最上級には the は必要なの?」
おはようございます。
(1) Tom can swim fastest of the three.
(2) Tom can swim the fastest of the three.
(1)は the 無し(=私が中学校で習ったのはこちらです。)
ところが、孫2人(高2、大2)は、(2)が正解よ!と回答。
そんなバカなと思い、早速ネットで調べてたところ、異なったご見解多数、どうにもハッキリとしません。
そこで、森先生に明快なご回答をお願いする次第です。よろしくお願いいたします。
回答「最上級に the が付く理由を押さえよう」
今回いただいたご質問には、こちらの動画でも回答しているので、ぜひ参考にしてほしい。
上の動画でも説明しているが、中学校などでよく言われる「最上級に the が付く」というのは、実は本質ではない。
本質は「最上級に修飾された名詞に the が付く」ということだ。
最上級に修飾された名詞に the が付く
tallest(もっとも高い)や most beautiful(もっとも美しい)などの最上級は「程度が一番上だ」ということを表している。
・もっとも高い建物
・もっとも美しい海
・もっとも大きな夢
こういった「程度が一番上のもの」は、基本的には一つしか存在しないはずだ。形容詞の最上級に修飾された名詞は「ただ一つのもの」であり「特定されるもの」だと言える。
そして英語では、「一つしかないもの」「特定されるもの」には定冠詞の the が添えられる。
最上級に修飾された名詞は「一つしかないもの」になるので定冠詞の the が付くと理解しておこう。
補語になっている最上級には、the はあってもなくてもいい
さて、形容詞には「名詞を修飾する」というはたらきの他に「補語Cになる」というはたらきもあった。
「補語Cってなに?」という人はこちら
>> 補語は品詞じゃないよ!
では、形容詞の最上級が補語Cになっている場合には、the は必要なのだろうか?
答えは「どちらでもよい」だ。
彼はクラスの中でもっとも頭がよい。
まず、文法的には the がないのが正しい。ここでの最上級(brightest)は名詞を修飾していないからだ。名詞がなければ、そもそも the を使う必要もない。
けれども、英語は人が感情を乗せて使う言葉だ。文法的な正しさだけが、その言葉の用法としての正しさを支えるわけではない。
「普段、最上級には the を添えている」という癖から、最上級が補語Cになっている場合にも the が添えられることがあるのだ。
また、the が添えられる理由として「名詞が省略されている」と考えることもできる。
話し手・書き手に「彼はもっとも賢い生徒なんだよね!」という気持ちがあると、定冠詞 the がつい出てきてしまうということだ。
副詞の最上級にも、the はあってもなくてもいい
また、副詞の最上級についても同様で、定冠詞 the はあってもなくてもいい。
彼は3人の中でもっとも速く泳ぐことができる。
そもそも副詞は名詞を修飾しないし、先ほどの理由から文法的には the がないのが正しい。
けれどもここも、普段、最上級を使うときの癖から、つい the fastest と言ってしまうのだ。
さいごに「限定された名詞に the が付くというのが本質」
いかがだっただろう。
「副詞の最上級に the は必要なんですか?」という質問への回答だけであれば「どちらでもよい」が答えになるが、それだとスッキリしないだろう。
ここでお話ししたように、
・文法的な正しさだけが、その言葉の用法としての正しさを支えるわけではない
という2つのポイントを押さえておこう。