
関係代名詞(who, which, that)は代名詞の働きを持っている言葉なので、普通の代名詞(he や it など)と同じように、前置詞の目的語Oになることもある。
(後から詳しく説明するが、もちろんこれは関係詞節の中での話だ。)
ここでは、関係代名詞の基本的な使い方を確認した上で、「前置詞+関係代名詞」という形について学んでいこう。
・どうして「前置詞+関係代名詞」という語順になるのかわかる
・「前置詞+関係代名詞」という文構造に強くなる
この記事の目次
関係代名詞の基本の確認
関係代名詞は「名詞をもっと説明したいな!」というときに使う言葉で、接続詞と代名詞の働きを兼ね備えている。
普通の代名詞(he や it など)と同じように主語Sになったり目的語Oになったりするが、これはあくまでも関係詞節の中での話だ。
関係代名詞の基本的な使い方や、この後も出てくる「関係詞節」や「先行詞」という言葉については、以下のページで詳しく解説しているので、わからない場合には参考にしてほしい。
※参考記事:関係代名詞の基本的な使い方|who, which, that の違いや省略について
前置詞の目的語Oが目的格の関係代名詞に姿を変える
関係代名詞を使うと、2つの文を1つの文にすることができ、名詞(先行詞)に説明文(関係詞節)を加えられる。
例えば、
(環境が私たちを決めるわけではない)
という文の名詞 circumstances(環境)に、説明文として
(私たちはその環境に生まれついた)
という文を加えることを考えてみよう。
つまり、「生まれた環境が私たちを決めるわけではない」という英文を、関係代名詞を使って表現しようということだ。
このとき、先行詞(circumstances)が2つ目の文で前置詞 in の目的語Oとして繰り返されている点に注目しよう。
※他動詞の後ろだけでなく、前置詞の後ろも「目的語」の位置だ
参考記事:関係代名詞の基本的な使い方でも詳しくお話ししているように、先行詞が2つ目の文で、主語Sとして繰り返されていれば主格の関係代名詞、目的語Oとして繰り返されていれば目的格の関係代名詞を使う。
今回、circumstances は2つ目の文で前置詞の目的語Oとして繰り返されているので、それが目的格の関係代名詞 which(または that)に姿を変えて前に回ってくる。
こうして、1つ目の文の名詞 circumstances についての説明文 “which (that) we are born in” が出来上がる……というのが、基本的な流れだ。
The circumstances that we are born in doesn’t define us.(○)
The circumstances we are born in doesn’t define us.(○)
(生まれた環境が私たちを決めるわけじゃない)
なお、目的格の関係代名詞は省略されやすいので、上に示した3番目の英文 “The circumstances we are born in doesn’t define us.” も正しい形だ。
※参考記事:関係代名詞の基本的な使い方|who, which, that の違いや省略について
前置詞と名詞は仲良し!だから前置詞が移動する
さて、前置詞というものは必ず後ろに名詞や代名詞を従えるという性質を持っている。
in the house(家の中で)や with my family(家族と一緒に)など、簡単な例を思い浮かべてもらってもそれはわかるだろう。
文法的な言葉を用いるのなら、この「前置詞+名詞」というカタマリを「前置詞句」というが、言うなれば「前置詞と後ろの名詞はとても仲が良い」ということだ。
そこで、先ほどのように、前置詞の目的語O(circumstances)が目的格の関係代名詞に姿を変える場合、「私も私も!」という感じで which と一緒に前置詞(in)も前に回ってくることがある。
要は、もともとの in the circumstances という形を崩したくない、ということだ。
もちろん、必ずしも前置詞を関係代名詞の直前に置かなければいけないということではないので、次の4つの表現のどれも正しいということを押さえておこう。
The circumstances that we are born in doesn’t define us.(○)
The circumstances we are born in doesn’t define us.(○)
The circumstances in which we are born doesn’t define us.(○)
関係代名詞が前置詞の目的語Oになるときの注意点
なお、関係代名詞が前置詞の目的語Oになる場合には、注意しておきたいことが3つある。
注意点1.「前置詞+関係代名詞 that」は不可
「前置詞と後ろの名詞はとても仲が良い!」とはいうものの、関係代名詞として that を使った場合には、前置詞を関係代名詞の直前に置くことはできない。
The circumstances in which we are born doesn’t define us.(○)
これは、that という言葉が前置詞ととても相性が悪いからだ。
関係代名詞の that だけでなく、接続詞の that も前置詞との相性が悪い。余談にはなるが、前置詞の目的語Oがthat節のときに、前置詞が必ず省略されるのはそのためだ。
↓
I’m proud that you have the confidence to express yourself.(○)
あなたが自分の言いたいことを表現する自信を持っていて誇りに思うわ。
注意点2. 「前置詞+関係代名詞 who」は不可
また、「人」が先行詞の場合には、目的格の関係代名詞として who または whom が使えるが、前置詞を前に回すのであれば必ず whom を使う。
I wish I had someone on whom I can lean always.(○)
いつでも頼れる人がいたらなあ。
現代の英語において、目的格の関係代名詞として who を使うのか whom を使うのかについては、以下のページの中でも触れているので、気になる場合には参考にしてもらいたい。
※参考記事:関係代名詞の基本的な使い方|who, which, that の違いや省略について
注意点3. 前置詞が動詞フレーズの一部なら「前置詞+関係代名詞」にはしない
そして、 “look for(~を探す)” や “get along with(~と仲良くする)” のように、前置詞が動詞フレーズの一部である場合には、前置詞を前に回したりはしないので注意しておこう。
She’s wearing my shirt which I‘ve been looking for.(○)
彼女が私が探していたシャツを着ている。
I have a female friend whom I get along with so well.(○)
私にはとても仲良くしている女友達がいる。
動詞フレーズの場合には、前置詞は動詞側と仲が良いということだ。
補足:ニュアンスの違いは?
ここまでお話ししたように、前置詞を関係代名詞の前に回しても、前置詞を関係詞節の最後に置き去りにしても、文法的にはどちらも間違いではない。
ただ、もちろん英語も言葉なので、表現が違えば少しは気持ちも変わってくる。(気持ちが違うから表現が違う……と言う方が的確だとは思うが。)
関係代名詞の直前に前置詞を置く場合と置かない場合とでは、次のようなちょっとした違いがある。
… フォーマル・きちんとしている
The circumstances in which we are born doesn’t define us.
… カジュアル・やや気軽な感じ
The circumstances which we are born in doesn’t define us.
やはり前置詞は「後ろに名詞が続く」というのが基本中の基本だ。前置詞だけが置き去りにされた後者のような表現は、比較的くだけた印象を与える。
もちろん、あくまでも印象の話なので、「カジュアル=間違い」ということではないし「フォーマル=正しい」というわけでもない。文法的にはどちらも適切な表現だ。
さいごに
ここでは、「前置詞+関係代名詞」という語順についてお話しした。
基本的には、前置詞は「関係代名詞の直前」「関係詞節の最後」のどちらに置いてもよいが、次の3点を注意点として押さえておこう。
2.「前置詞+関係代名詞 who」は不可
3. 前置詞が動詞フレーズの一部なら「前置詞+関係代名詞」にはしない