英文法の勉強法に悩むあなたへ! 基礎から伸ばす5つのポイント
私たち日本人にとって英文法が重要なのは、日本語と英語では「語順」が大きく異なるからだ。
英文法に対して「難しい」「面白くない」といったイメージを持っている人もいるかもしれないが、英語そのものが論理的な言語なので、適切な方法と順番で学べば、とても興味深く英文法を身に付けていける。
ここでは、英文法の具体的な勉強法について、ステップ・バイ・ステップで確認していこう。
CONTENTS
なぜ英文法が必要なのか?
冒頭でも触れたように、英語学習で英文法(語順のルール)が欠かせないのは、日本語と英語では「語順」がまったく違うからだ。
例えば、動詞と目的語の順番について。日本語では「目的語 → 動詞」という順番なのに対して、英語では「動詞 → 目的語」という逆の順番で表現される。
「バター取ってくれる?」
目的語:バター
動詞:取る
“Could you pass me the butter, please?”
動詞:pass
目的語:butter
他にも、修飾語と被修飾語の順番も真逆だ。日本語では「修飾語 → 被修飾語」という順番なのに対して、英語では「被修飾語 → 修飾語」という順番になることがかなり多い。
彼が作ってくれた夕食
修飾語:彼が作ってくれた
被修飾語:夕食
the dinner (that) he made me
被修飾語:the dinner
修飾語:(that) he made me
このように、日本語と英語は「語順」がまるで違うので、「日本語の感覚で英語に触れると怪我をする」というのは、ある意味、自然なことだ。
読解力を伸ばすにせよ、表現力を伸ばすにせよ、まずは「語順がまったく違う」という大前提を理解しておこう。
それだけでも、英文法(語順のルール)を学ぶモチベーションに繋がるかもしれない。
やってはいけない英文法の勉強法
英文法の具体的な勉強法の話に入る前に、まずは「やってはいけない勉強法」について確認しておこう。
英文法に限らず、何かの結果を出すためには、「何をするか?」よりも「何をやらないか?」の方がはるかに重要だからだ。
1. いきなり文法問題を解く[NG]
「英文法を身に付けるために文法問題を解く」というのは、一見すると、正しいアプローチのようだが、基礎知識のない段階で文法問題を解くのはオススメしない。
なぜなら、英文法に限らず、問題集というものは、知識や考え方をインプットする(覚える・理解する)ためのものではなく、アウトプットする(思い出す・活用する)ためのものだからだ。
また、授業や参考書などとは違い、文法問題の解説は体系的・網羅的ではないことも多い。
文法問題に時間をかけるなら、ある程度、英文法の基礎知識が身に付いた上で取り組むようにしよう。
2. 英文法を丸暗記しようとする[NG]
また、英文法を丸暗記するのも、あまり効果的ではない勉強法だ。
例えば、have + 目的語O + 過去分詞という表現には、利益(Oを〜してもらう)と被害(Oを〜される)の意味があるが、そうした意味だけを覚えても、英文法(語順のルール)への理解が深まるわけではない。
なぜなら、「文の形がどうなっているか?」という視点が抜け落ちているからだ。
このあと、ステップ・バイ・ステップで確認していくが、読解力や表現力を伸ばすための文法力を身に付けるなら、丸暗記ではなく、品詞や文型を土台にしながら、「なぜそういう意味になるのか?」を学んでいくのが効果的だ。
英文法の勉強法【5つの基礎】
それでは、英文法の具体的な勉強法について確認していこう。
特に、「英文法に苦手意識がある」「何から始めたらいいかわからない……」という場合には、次の5つの基礎を押さえるだけでも、英文法の理解や見え方が大きく変わってくるはずだ。
文法用語にこだわりすぎる必要はないが、かといって、すべての文法用語を避けながら英文法を身に付けることもできないので、今からお話しする5つの基礎だけでも理解しておこう。
1. 自動詞と他動詞の違いをとにかく大切に
英文法を身に付けるなら、とにかく「自動詞と他動詞の違い」を大切にしよう。
なぜなら、自動詞と他動詞の違いは、不定詞・動名詞・分詞・分詞構文・関係詞など、多くの単元や表現の土台になっているからだ。
(つまり、不定詞や関係詞などが苦手な人は、自動詞と他動詞の違いを疎かにしている可能性が高いということ。)
自動詞と他動詞には、それぞれ、次のような特徴がある。
・「を」「に」が含まれない
・そのため、目的語O(動作の対象)が不要
例:look(見る)、go(行く)、swim(泳ぐ)など
・「を」「に」が含まれる(※)
・そのため、目的語O(動作の対象)が必要
例:watch(を見る)、visit(を訪れる)、enter(に入る)など
自動詞と他動詞の違いについて、詳しくは以下のページの動画でも解説しているので、ボタンを掛け違えたまま英文法の勉強を進めてしまわないよう、しっかりと確認しておこう。
2.「品詞」と「SVOCM」を区別する
自動詞と他動詞の違いを理解したら、次は「品詞」と「SVOCM」は違うということを理解しよう。
確かに、両者が同じ語句を指すこともよくあるので、最初は違いがわかりにくいかもしれないが、品詞とSVOCM(文の要素)には次のような違いがある。
・名詞、形容詞、副詞、助動詞、動詞、前置詞、接続詞、間投詞の8つ
・他の部分との「繋がり」を表す
例:「形容詞は名詞を修飾する」「副詞は動詞を修飾する」など
・主語S、述語動詞V、目的語O、補語C、修飾語Mの5つ
・文型(文の形)を表すためのもの
一つひとつの品詞やSVOCMの特徴については、後々学んでいくとして、ここでは「品詞とSVOCMは違う」ということをよく押さえておこう。
A bird is flying over there.
(あそこに鳥が飛んでいる。)
・a bird の「品詞」は名詞
・a bird の「文の要素」は主語S
ウェブサイトや授業によっては、品詞とSVOCMを混同したまま解説を進めているケースもあるので、学ぶ側としても注意が必要だ。
なお、SVOCMは「文の要素」と呼ばれることもある。
3.「品詞」と「SVOCM」の関係を整理する
品詞とSVOCMを区別できたら、続いては、それぞれの関係を整理しよう。
確かに、品詞とSVOCMは別のものだが、親と子が別の人間だからといって、関係がないわけではないのと同じように、品詞とSVOCMの間にも、いくつかの繋がりはある。
具体的には、少なくとも名詞・形容詞・副詞について、「品詞から見た関係」と「SVOCMから見た関係」の両方を押さえておくと、英文法の勉強をしやすくなる。
名詞 → 主語S、目的語O、補語Cになる
形容詞 → 補語C、修飾語Mになる(名詞を修飾する)
副詞 → 修飾語M(動詞・形容詞・副詞を修飾する)
主語S → 名詞
目的語O → 名詞
補語C → 名詞、形容詞
修飾語M → 形容詞、副詞
自動詞と他動詞の違いと同じように、こうした品詞とSVOCMの関係は、多くの単元や表現を理解していく上での土台になるものだ。
4. 文型の特徴を理解する
「品詞」と「SVOCM」の関係を整理できたら、いよいよ、5文型を学んでいこう。
文型とは、簡単に言えば「語順」のことで、英語には5つの文型がある。(5つの文型しかない。)
英語の意味や訳し方は、「どんな文型なのか?」によってある程度決まってくるので、読解や表現の練習を繰り返す前に、5文型それぞれの特徴を掴んでおこう。
文型 | 表し方 | 主な意味・訳し方 |
---|---|---|
第1文型 | SV | SがVする |
第2文型 | SVC | SはCだ、SはCになる |
第3文型 | SVO | SはOを〜する |
第4文型 | SVO1O2 | O1(人)にO2(物)を与える |
第5文型 | SVOC | OをCにする、OにCさせる |
→ スマホでは表をスワイプできます
5. 英語をカタマリ(句や節)で捉える
自動詞と他動詞の違いや5文型を押さえるだけでも、多少は英文法の基礎が整うが、「丸暗記したフレーズではなく、自分の考えを表現したい」「少し長めの英文でも理解できるようになりたい」という場合には、「句」や「節」という視点を取り入れよう。
これらは単なる文法用語ではなく、文型(英文の形)を把握するための視点だ。
The flowers in the vase are beautiful.
(その花瓶の花はとても美しい。)
※ in the vase は flowers を修飾する形容詞句(SVがない大きな形容詞)
I didn't know that he moved to Paris.
(彼がパリに移ったのを知らなかった。)
※ that he moved to Paris は他動詞 know の目的語Oになっている名詞節(SVがある大きな名詞)
こうした句や節を、まるで一つの単語であるかのように扱えていれば、英文法の勉強が上手くいっている証拠だ。
句・節の見つけ方
なお、「どこからどこまでを一つのカタマリだと見るのか?」は、感覚的に判断するものではなく、品詞の働きから判断するものだ。
例えば、前置詞( in や of など)の後ろには必ず名詞が続くので、「前置詞+名詞」を一つのカタマリ(句)だと見なせるし、接続詞( because や that など)の後ろには必ずSVが続くので、「接続詞+SV」を一つのカタマリ(節)だと見ることができる。
中には、many times(何度も)や over there(あそこに)など、意味の繋がりに注目して「句」と見なすものもあるが、基本的には「必ず後ろに●●が続く」という品詞の働きを基準にして、句や節を見つけていこう。
英文法の勉強法【戦略編】
ここからは「戦略編」として、もう少し広い目で英文法の勉強法を眺めてみよう。
品詞や文型といった基礎だけでなく、あなたがこれから、不定詞・動名詞・分詞・分詞構文・関係詞といった単元や表現を学んでいくときの羅針盤になると幸いだ。
インプット編
英文法の知識や考え方をインプットするときには、
1. 丸暗記ではなく論理的に学ぶ
2. 文法用語を「品詞」に沿って整理する
という2点を大切にしよう。
1. 丸暗記ではなく論理的に学ぶ
昔ながらの学校教育に慣れすぎていると、「英語=文系=暗記」というイメージが強いかもしれないが、実際には、英語は日本語よりもはるかに論理的な言語だ。(文系・理系の定義や分類の意義については、ここでは議論しないけれど。)
例えば、現在分詞(動詞の -ing 形のうち形容詞として使うもの)には、進行(〜している)の他に能動(人を〜させるような)の意味もあるが、どちらの意味になるのかは、元の動詞が「自動詞」なのか「他動詞」なのかによって分かれている。
→ 進行(〜している)
I like your smiling face.
あなたの笑っている顔が好きだ。
※ smile(笑う)が自動詞なので、smiling は進行(笑っている)の意味になる。
他動詞の現在分詞
→ 能動(人を〜させるような)
I can't stand boring talks.
退屈な(人を退屈させる)話には耐えられない。
※ bore(〜を退屈させる)が人の感情を表す他動詞なので、boring は能動(人を退屈させるような)の意味になる。( boring が「退屈している」だと意味が繋がらない。)
このように、英文法そのものが論理的なものなので、英文法を学ぶときには、フレーズを丸暗記するのではなく、「なぜそういう意味になるのか?」を大事にしながら学んでいこう。
なお、ひょっとすると中には、「自分は論理的なことが苦手だから、英文法は無理かも……」と思う人もいるかもしれないが、英文法の論理は、数学や物理学などの論理に比べると、はるかに単純なものだ。
それこそ、このページをここまで落ち着いて読めるくらいの思考力や論理性があれば、英文法は十分身に付けられる。
2. 文法用語を「品詞」に沿って整理する
また、英文法の知識や視点をインプットするときには、動名詞・現在分詞・関係代名詞といった文法用語を「品詞」に置き換えて整理するのがオススメだ。
以下の代表的な文法用語を「品詞」に置き換えるだけでも、文法アレルギーが軽減されるキッカケになる。
動名詞:「名詞」
現在分詞:「形容詞」
過去分詞:「形容詞」
不定詞:「名詞」「形容詞」「副詞」のどれか
分詞構文:「副詞」
関係代名詞:「代名詞」と「接続詞」
関係副詞:「副詞」と「接続詞」
文法用語という表面的なイメージに振り回されることなく、「品詞の働き」という本質を押さえていこう。
アウトプット編
インプットがそれなりに進んだら、今度は復習としてアウトプットをしていこう。英文法の知識や考え方をアウトプットする(思い出す・活用する)ときには、
1. 誰かに説明するつもりでまとめる
2. 文法問題を解く
3. 英文を組み立てる
という3つのアプローチが効果的だ。
1. 誰かに説明するつもりでまとめる
ここはインプットとアウトプットの境目かもしれないが、英文法の知識や考え方をノートにまとめるなら、誰かに説明するつもりでまとめるのがとても効果的だ。
実際、サイモン・フレーザー大学の研究チームによる「64の研究を分析したメタ分析」では、学習効果が高い人ほど「自分が理解したことを説明する」という行為を自発的に行なっていたことと、さらには、説明するという行為は「自発的でなくても効果がある」ということがわかっている。
cf. Inducing Self-Explanation: a Meta-Analysis
具体的には、英文の意味という「結果」だけをノートに書くのではなく、「なぜ、その意味になるのか?」という「過程」をまとめていこう。
ノートのまとめ方(例)
all you have to do is (to) do(〜しさえすればよい)について
All you have to do is (to) sit here.
do は他動詞なので目的語Oが必要だが、直後に名詞がない。英語では、省略できる目的語Oは「関係代名詞の目的格」なので、all と you の間に、関係代名詞の目的格 that が省略されているとわかる。
All (that) you have to do is (to) sit here.
つまり、この文の文構造は、
主語S:All(すべてのこと)
修飾語M:(that) you have to do(関係詞節)
動詞V:is
補語C:(to) sit here(名詞的用法の不定詞)
という形なので、直訳すると「あなたがすべきすべてのことは、ここに座ることです」になる。これを自然な日本語にすると、「あなたはここに座りさえすればよい」「あなたはここに座るだけでよい」という言い回しになる。
※補語Cの不定詞(ここでは to sit here )は、この表現では原形不定詞( to がない不定詞)になることも多い。
こうしたノートの取り方は、最初は大変に思えるかもしれない。ただ、英語は日本語とは違って「言葉そのものが重要視される言語」なので、ノートにまとめる過程を通して、「言語化する力そのもの」を磨いておく価値はありそうだ。
2. 文法問題を解く
このページの序盤でも触れたが、四択などの文法問題は、知識をインプットするためのものではなく、アウトプットする(思い出す・活用する)ためのものだ。
そこで、文法問題に取り組むなら、何度か学習したことのある単元についての問題に取り組むようにしよう。
また、文法問題を使った学習でのポイントは、「正しい選択肢を選べているかどうか」という表面的な結果ではなく、「考え方が合っているかどうか」という過程を見つめることだ。
具体的には、「その選択肢が適切な理由」だけでなく「他の選択肢が不適切な理由」も考えるようにすると、インプットとアウトプットを並行するような形にもなり、学習効果が飛躍的に大きくなる。
I found him _______ after hard work.
(大変な仕事の後で、彼は疲れているように思えた。)
a. tiring
b. tired
c. to tire
・b が適切な理由は……
・a と c が不適切な理由は……
ただ、多くの問題集やその解説では、「他の選択肢が不正解の理由」が詳しく説明されていないことも多いので、その点については、先生などの専門家に頼っていこう。
3. 英文を組み立てる
また、英作文に興味があってもなくても、「英文を組み立てる」というアプローチは、英文法のアウトプットとしてとてもパワフルなものだ。
英文を組み立てる際には、「何となく」ではなく「品詞と文型」を意識しながらアウトプットしていこう。
I'll send you ...
→ send は第4文型(SVOO)を作る他動詞だから、後ろには……
The book which you recommended ...
→ 関係代名詞の which を使ったから、他動詞 recommended(を勧めた)の後ろは……
ここも最初は少し時間がかかってまどろっこしく思えるかもしれないが、止まったボールを正しいフォーム打てない人が、動いているボールを打てるはずがない。
初めはゆっくりでも構わないので、英作文をするときにも「品詞と文型」というフォームを大切にしよう。慣れてくれば、それほど意識しなくても、正しい文型で表現できるようになるはずだ。
取り組み方としては、問題集の整序問題などを使ってもいいし、今なら、chatGPT や Gemini などのAIを活用して、アウトプットした英文を添削してもらうこともできる。
例えば、上の図のように、自分の英作文に対して、
(この表現って、文法的・文脈的に正しい?)
(文法的な間違いがあれば、修正して言い直してくれる?)
といったプロンプト(指示)を添えれば、AIに軌道修正してもらうこともできる。
さいごに|英文法には「終わり」がある
英文法の勉強をやり直そうとしている人の中には、「やる気はあるけど大変そう」という印象を持っている人もいるかもしれないが、読解や表現の練習とは違って、英文法には明らかな終わりがある。
なぜなら、英文法とは「語順のルール」であり、ルールというものは有限だからだ。
確かに、ある程度、勉強を進めるまでは、「なかなか終わりが見えないな……」と感じることもあるかもしれないが、「英文法には終わりがある」ということを理解しておけば、学習のモチベーションにも繋がるはずだ。