なぜ自動詞・他動詞が区別できないと英語の勉強が無駄になるのか?
自動詞・他動詞の違いを理解することは、英語を勉強していく上でもっとも重要な基礎のうちの一つだ。
自動詞・他動詞の違いを理解していないために、「不定詞」「分詞」「関係詞」などが苦手になってしまっていることも多い。
ここでは、自動詞と他動詞の違いを理解することが、他の単元や表現にどう繋がるのかについてお話ししよう。
この記事を読んで得られること
- 自動詞と他動詞の違いがよくわかる
- 苦手だった文法単元が得意になる
CONTENTS
自動詞・他動詞の違いを確認
自動詞と他動詞の違いは、目的語Oを必要としないのか、必要とするのかだ。
自動詞 … 目的語Oを必要としない動詞
他動詞 … 目的語Oを必要とする動詞
ただ、これがそもそも分かりにくい。
もちろん目的語Oという言葉に慣れていく必要はあるが、最初はもっと別の角度から、自動詞・他動詞の違いにアプローチするのが得策だ。
次の文を見てほしい。
I went into her room.
I entered her room.
どちらの文も「私は彼女の部屋に入った」ということだが、動詞の went と entered は、いったい何が違うのだろう?
実は、went と entered では、動詞に含まれている言葉(意味合い)が決定的に異なる。どういうことなのか? 単語一つひとつを訳すことで違いを見てみよう。
このように went には「部屋に」の「に」の意味は含まれていない。前置詞 into が「部屋に」の「に」の意味を担っているからだ。
一方で entered には「部屋に」の「に」の意味が含まれている。前置詞 into がないので、entered という動詞が「に」の意味を担っている。
そして、それぞれの英文において、動詞の後ろで文が途切れてしまった場合、不自然でないかどうかを考えてみよう。
went の場合には「私は入った」という意味になり、これだけでも文としては成立する。(もちろん、意味として十分かどうかは別だが。)
これに対して、entered の場合には「彼はに入った」という意味になってしまう。これでは文として成り立たない。
そこで、entered の後ろには、「何(どこ)に入ったのか」の「何(どこ)」に当たる言葉が必要で、これを目的語Oという。
このように、確かに自動詞・他動詞は目的語Oのナシ・アリによって分類されているものだが、見方を変えれば「を」や「に」という意味のナシ・アリよっても分けることができる。
⇒ 動詞に「を・に」などが含まれない
⇒ 目的語Oが不要
他動詞
⇒ 動詞に「を・に」などが含まれる
⇒ 目的語Oが必要
なお厳密に言うと、「に」という意味を含む自動詞もあるが、英文法に慣れるまでは後回しにしておいて構わないだろう。
この点について詳しく学びたい場合は、以下の記事を参考にしてほしい。
※参考記事:こうやって教えてほしかった!自動詞と他動詞の大きな違い
自動詞・他動詞を意識すると、こんなメリットがある
自動詞と他動詞の違いを理解することは、あなたに多くの恩恵を与えてくれる。
ここでは、自動詞と他動詞についての知識がどのように活きてくるのか、具体的な例を3つ挙げよう。
現在分詞の2つの意味を判断できる
現在分詞は、動詞の ing 形のうち形容詞の働きを持つものだ。
tall や beautiful といった一般の形容詞と同じように、名詞を修飾したり、補語Cになったりする。
ここでは、名詞を修飾する現在分詞を例に見ていこう。
歩いている女の子
a tiring job
人を疲れさせる仕事
おそらく現在分詞というと、前者の walking のように「~している」という意味を持つものが有名だろう。
けれども、すべての現在分詞が「~している」という意味を持つとは限らない。
後者の tiring がまさにそれだ。a tiring job は「疲れている仕事」ではなく「人を疲れさせる仕事」という意味だ。
同じ "~ing" という形なのに、一方は「~している」で、もう一方は「人を~させる」
どうしてこういった違いが出てくるのかというと、 "~ing" の元になっている動詞に違いがあるからだ。
walking の元になっている動詞は自動詞 walk(歩く)。一方で、tiring の元になっている動詞は他動詞 tire(を疲れさせる)だ。
⇒「~している」(進行)
他動詞の現在分詞
⇒「人を~させる」(能動)
※特に excite や surprise, annoy など「人の感情を表す他動詞」の場合にこうなります。
このように、現在分詞の意味は元になっている動詞が自動詞なのか他動詞なのかによってある程度決まっている。
もちろん過去分詞についても同様だ。
自動詞・他動詞の知識を持たずに分詞という単元を学んでいくのは、本当に勿体ない。
前置詞 of の訳し方がハッキリする
自動詞・他動詞の知識は、こんなところでも役立つ。
列車の到着
the discovery of oil
石油の発見
どちらも "A of B" という形をしていて「BのA」と訳すことができるが、そこにはある大きな違いがある。
of の後ろの名詞が、意味的に主語(S)なのか目的語(O)なのかだ。
列車の到着=列車が到着すること
(the train は意味的に主語)
the discovery of oil
石油の発見=石油を発見すること
(oil は意味的に目的語)
この違いも自動詞・他動詞に由来する。
arrival は自動詞 arrive(到着する)の名詞形、discovery は他動詞 discover(を発見する)の名詞形だ。
of の前に置かれた名詞が「自動詞の名詞形」なのか「他動詞の名詞形」なのかによって、of の後ろの名詞の役割が決まっている。
⇒ of の後ろは意味的に主語(S)
他動詞の名詞形 + of
⇒ of の後ろは意味的に目的語(O)
こういった知識を活用すれば、英文がずいぶん読みやすくなるものだ。
※関連記事:英語が得意な人は必ず知っている、2つのofの使い方
関係代名詞と関係副詞の違いがわかる
関係代名詞と関係副詞の違いを理解するためにも、自動詞・他動詞の知識は欠かせない。
ここは彼が私に勧めてくれた場所だ。
This is the place where I was sleeping. …… (2)
ここは私が寝ていた場所だ。
(1) では、recommend が他動詞なので、その目的語Oとして、名詞の働きを持つ関係代名詞 that が用いられている。
それに対して (2) では、sleep が自動詞なので目的語Oが必要なく、副詞の働きを持つ関係副詞 where が用いられている。(副詞は目的語Oにはならない。)
関係詞については、詳しくは以下の記事でも解説しているが、ここで挙げた例だけでも、自動詞・他動詞の違いを押さえずに関係詞は学べないということが伝わると幸いだ。
※参考記事:関係代名詞・関係副詞の違いをマスターする3つのポイント
さいごに「動詞が姿を変えても自動詞・他動詞を意識しよう」
もしもあなたが、単なる丸暗記ではなく、理解しながら楽しく英文法を学びたいのであれば、まずは自動詞と他動詞の違いを強烈に意識することから始めよう。
そしてぜひ、動詞が姿を変えたもの(walking や tiring, arrival や discovery など)に出会ったときにも、それが自動詞出身なのか他動詞出身なのかを考えるようにしてほしい。
そうすることで、バラバラだった英文法の知識が繋がり始め、やがてあなたの頭の中で体系化されるだろう。
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