【受講生との質問やりとり】having done について

最近、少し感じているのは、「質問を頻繁にくれる人の方が、文法力が身に付きやすいのではないか」ということだ。
理由は2つ。
質問することを前提に授業を受けると、集中力が高まりインプットの質が高まる。また、メールなどの文章で質問すること自体が、質の高いアウトプットになるからだ。文章で聞きたいことを説明するには、意外と頭を使う。
(もちろん、質問をそんなにせずとも、虎視眈々と努力を続けている人がいるのもよく知っている。)
私がオンラインで提供している英文法コンテンツの English Grammar Academy(EGA)では、質問受付サポートというものを設けているが、そこでのやりとりほんの少しばかり共有しよう。
今回は、苦手な人が多い having done という形についてだ。
一つだけ断わっておくと、質問への回答は、その人が理解しやすそうな表現を心がけているので、必ずしも文法学者たちが好むようなものではないだろう。説明や論理に嘘はないが、文法的な正しさ以上に、理解のしやすさに重きを置いている。
まずは、回答へのご感想から
今回、ご質問への回答に対して、こんな温かいメッセージをいただいた。
感謝ももちろんですが、あらゆる例文を集めてこんなにわかりやすく説明していただけるとは感激ですm(_ _)m
思うに、その道のプロ?(笑)だと、その先生の頭脳の中では明確だと思うのですが、こちらには伝わってこなくてもどかしい思いをすることもあるのですが、(極端な例ですが、野球でいう長島さんのような感じ?笑)やっぱり森先生は、"教える" ということに長けていらっしゃるので、"先生" の中でも本当のプロの "先生" ですよね。
あーそこそこ!みたいなかゆいところに手が届くような素晴らしい回答ありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました。質問だけでなく、こうして回答に対するメッセージをいただけると、とても嬉しいですし、私も勉強になります。
今回の質問「having done は何者!?」
それでは、今回いただいた質問を見てみよう。
お世話になっております。
早速ですが例文です。。
Why do you ignore the fact of my having seen him at the scene of the crime?
こちらの "my having seen" のことについての質問です。
所有形容詞?myの後なので、having seen は名詞?だと思うのです。
ですが、having seen = have seen = 完了形 ですよね?
要するに「私が彼を目撃したこと」というような意味になると思います。
この見解は間違っているでしょうか。
どうかお教えください。よろしくお願いいたします。
私の回答「過去を表す動名詞ですよ」
お久しぶりです!ご質問ありがとうございます。
早速、解答していきますね。
>Why do you ignore the fact of my having seen him at the scene of the crime?
>所有形容詞?myの後なので、having seen は名詞?だと思うのです。
>要するに「私が彼を目撃したこと」というような意味になると思います。
ここの考え方は、概ね合っております。
having seen は「(見た目が)完了形の動名詞」と呼ばれるもので、普通の動名詞よりも過去の動作であることをハッキリと表すものです。
実はここは、少しややこしい部分なのですが……
まず、普通の動名詞は、不定詞に比べると「過去」っぽいニュアンスを含みますよね?
★ Do you remember going there?
そこに行ったこと(going there)を覚えていますか?
⇒ 行ったのは「過去」
★ Remember to go there.
そこに行くこと(to go there)を覚えておきなさい。
⇒ 行くのは「未来」
ただ、必ずしも、動名詞が「過去の動作」を表すかというと、そうとも限りません。
★ I am used to getting up early.
早起きすること(getting up early)に慣れている。
⇒ 「今」慣れている
こういった動名詞は、どちらかというと「現在の動作」を表しています。
つまり動名詞は、過去を表したり、現在を表したりと、ちょっと不安定な感じ。
そこで、過去の動作であることをハッキリと表すために、having + done という形の動名詞を使います。
my seeing him よりも my having seen him の方が、「私が彼を見た」のが「過去」だということがよりハッキリとわかるということです。
ちなみに、この having + done という形で「過去」を表すというのは、「助動詞」のところと同じ感覚ですね。
★ He may be there.
彼はそこにいるかも知れない。(現在)
★ He may have been there.
彼はそこにいたかも知れない。(過去)
may の後ろの have + been で「過去」だということを表しています。
「仮定法」でも同じ感覚です。
★ I wish I could buy a car.
車が買えたらなあ(現在)
(could buy は、仮定法過去)
★ I wish I could have bought a car.
車が買えたらなあ(過去)
(could have bought は、仮定法過去完了)
このような場合、過去分詞の seen や done だけを見るのではなく、「having + seen」というカタマリで見てやってください。「having + seen」で一つの動名詞ということになります。
さて、いかがでしょうか?
わかりにくいところがあれば、またお気軽にご質問ください。
よろしくお願いいたします。
いかがだっただろう?キミも having doing という形の動名詞について、少しは整理できただろうか?
お話ししたように、「助動詞」や「仮定法」のところと同じような感覚で眺めてみると、意外としっくりくるかも知れない。